2012年08月10日

世界の至宝 究極の美“ウリヤーナ・ロパートキナのインタビュー”

Q:ロパートキナさんの踊りからは「美」というものの究極な形を感じると同時に、崇高な精神とでもいうべき、何か特別なものを感じます。ご自分で踊る時に、自ら課していることはあるのでしょうか?
ロパートキナ(以下、L):ありがとうございます。私はいつも舞台に出る前に必ず自分自身の時間を取るようにしています。それは、今から自分が何を踊るのか、どういう内容で踊るのか、自分自身の心の奥底に問いかけるための大切な時間です。
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Q:今までに何回も踊っていらっしゃる「白鳥の湖」は、振付は変わらないのに、それでいて、毎回違う感動を我々に与えてくださいます。
L:そうですね。お客さまは常に新しいものを期待して来られますし、特にマリインスキー劇場はレパートリーの中心が古典作品=「永遠に上演し続けられる傑作」ですから。
その中で、何らかのニュアンス、感情のニュアンスなどを表現していくことが求められているのです。
「白鳥の湖」の振付は変えられませんから、その演じ方、ニュアンスによって表現を変えていかなくてはいけません。ポーズひとつをとってみても、柔らかくポーズをとるのかパッととるのか、ポーズからポーズへの動きをゆっくりとるのか、素早く動くのかということで細かくニュアンスを変え、それらを積み重ねていくことで大きな感動に導くよう物語を紡ぎます。

Q:ロパートキナさんの「美」の基準、譲れないこととは何でしょうか?
L:私にとって「美」とは、「調和」です。シンプルなものから複雑なものへ、音でも小さいものから大きなものへと、いろいろ変化しますが、調和とは、それらがあるべきところにピタっとおさまっている状態だと思うんです。
(しばらく考えて・・・)
私にとって「美」とは、攻撃的でないもの、何かしら秘められたもの、というものが「美」なのではないかと思います。また、見えるもの、聞えるもの、心感じるものの相互作用が「美」だと思います。
それが人間の中に「光」「歓び」、そして「インスピレーション」を生み出します。つまりこれらは「美」を認識した時に生まれるエネルギーなのです。・・・ロシア語では、「光」という言葉は「聖なる」というニュアンスも含まれ、朝の光の中に神々しさを感じるように、心の中にともる「光」という意味でもあります。

Q:物語という点でいうと、「ラ・バヤデール」のニキヤはどのような女性としてとらえていますか?ソロルへの愛を貫く純粋な女性であると同時に、強い女性でもありますね。
L:ニキヤは逃れられない大変な運命を担った女性ですね。
彼女は寺院に仕える女性、自分自身を神に捧げている存在です。その彼女が人間の男性を愛してしまった。しかもその愛の中でこそ神の存在を感じることができた。つまり神から贈られた愛は、神に使えてきた彼女のそれまでの生き方とは矛盾してしまうのです。
運命をさらに複雑にしているのが、大僧正(ハイブラーミン)から寄せられた一方的な愛情を拒絶するところにもあります。愛の矛盾、とでも言うのでしょうか。さらに愛する人からの裏切りという試練もありますね。
この役の難しいところは、ひとつも幸せな愛がないところです。ソロルとの禁じられた苦しい愛(自分の立てた誓いを破らなくてはいけない愛)、自分の愛する人と(自分ではない)ガムザッティとの結婚式で、彼らに神からの祝福を与える舞を踊らなくてはいけないという痛み。バレエという限られた空間に、ニキヤの運命のストーリーが凝縮されています。
第二幕は、ある人生哲学の証明でもありますね。人間は変わるもの、変わらないことを求めてはいけない。と同時に神は変わらない、信じられるものは神のみであるということです。第二幕でニキヤは、神に問いかけたり、人間に問いかけたりしていますが、それは真実の二つの側面を表現しているのです。
第三幕では、神がニキヤを自分のところへと引き上げ、迎えいれます。そこは、憎しみや悔しさ、正義を追求する気持ち、復讐などは感じない世界。そこから彼女は全幕を通してソロルに対し、すべてを許してくれる神を思い出すように語りかけているのです。
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Q:マリインスキー劇場の「バヤデルカ」には、神殿崩壊の場面がなく、影の王国で終幕となりますが、ニキヤはソロルを赦したのだと思われますか?
L:私の解釈では、ニキヤ自身はその時はすでに人間の感情を超越したところにいるのだと思います。怒り、恨み・・・などという生身の人間の世界でうごめいている感情はいずれ消え去ってしまうもの。残るものは神のみだということを(右手をかかげる)ポーズで伝え続けているのだと思います。

Q:「ラ・バヤデール」の2幕は、秘めた感情と、ほとばしる感情、その両方で魅せるシーンだと思いますが、感情のコントロールと、スタイルのある正統な踊り、その二つのバランスをどのようにとっていらっしゃるのでしょうか?
L:スタイルも守り、その中で複雑な感情を表現しなくてはいけない。それを助けてくれているのが「音楽」ですね。そしてその「音楽」をどう演奏するか、オーケストラの力量もとても重要です。
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Q:ドゥジンスカヤ先生、セルゲーエフ先生、クルガプキナ先生と、脈々と続く伝統を受け継ぐ存在として、後輩たちに伝えたいことはありますか?
L:私は今もなお、受け継いだスタイルを完成させ、そのスタイルを失わず守り続けようと日々努力しています。そのためには、指導してくださる先生の存在が不可欠です。だからこそ、どういう先生に学ぶかということはとても大切なことです。先生との良好な信頼関係は重要ですから。今は、イリーナ・チェスチャコワ先生について学んでいます。彼女もクルガプキナ先生のもとで学んだ人ですが、映画の監督でもあり、一つの映像を作るのに俳優を配置したり動かしたりするという手腕によって、古いバレエ作品を新しく見せることに優れています。様式美を守りながら、それをさらに美しく見せることができるのです。と同時に、私は彼女から、どう教えるのかということを学んでいます。
教師という職業はダンサーとはまったく違った職業で、教える才能があったとしても、学んでいかなくてはいけないと思います。バレエ・ダンサーという職業は、自分の全てを注ぎ込まなくてはいけない職業ですし、多大な訓練が必要です。自分のことですら全てを把握して踊ることは相当難しいのに、他の人にどのように踊れば良いかと教えるのは、大変なことだと思います。

ありがとうございました。日本での公演を楽しみにしています!

マリインスキー・バレエ 2012年来日公演

 [公演日程]
 《ラ・バヤデール》
 □11月15日(木) 18:45 文京シビックホール
  11月24日(土) 18:00 東京文化会館
  11月25日(日) 14:00 東京文化会館
  11月26日(月) 18:45 東京文化会館 
 《アンナ・カレニーナ》
 □11月22日(木) 19:00 東京文化会館
 □11月23日(金・祝) 14:00 東京文化会館

 《白鳥の湖》
 □11月17日(土) 18:00 文京シビックホール
 □11月20日(火) 18:45 府中の森芸術劇場
 □11月27日(火) 18:45 東京文化会館
 □11月29日(木) 13:00 東京文化会館
 □11月29日(木) 18:45 東京文化会館 
 《オールスター・ガラ》
 □12月2日(日) 18:00 東京文化会館

2012年日本ツアーオフィシャル・ホームページはこちら

 

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