Q:ボリショイ劇場改修後の舞台で踊ってみた感想は?
A:いろいろな思いでいっぱいでした。私は幸運にも改修前のボリショイの舞台で、多くの作品を踊ることができました。ですから改修後の舞台に出るのは、緊張もあった反面、ダンサーみんなが待ち望んでいたことでした。

Q:6年間というのは長かったですか?
A:ええ、とても長かったです。少し残念なことなのですが、私は劇場が変わってしまった気がするのです。お客さまがたが知っている劇場(舞台)は以前のままですが、出演する私たちダンサーの知っている部分(楽屋)が変わった気がするのです。改修前の楽屋には、それまで働いてきた多くの人たちの思いが詰まっていました。劇場自体が、その多くの人たちのおかげで生きてきたと思うのです。ですから、今、ダンサーはじめアーティストたちが再び劇場(楽屋)に命を吹きこみ、生命力で満たしていくには、少し時間がかかると思います。以前のように公演もどんどん行い、私達も喜んで踊り、ダンサーたちものめり込んでいくうちに、満たされていくでしょう。
Q:では、その最初の一歩を、ルンキナさんたちが作っていくんですね。
A:そのとおりです。バレエ、オペラにかかわらず、私たち芸術に携わる人々というのは、ちょっと違ったオーラがあり、強い感受性を持っています。その息吹を吹き込んでいきたい、この新しい劇場の歴史はこれから作られていくのです。
Q:若い世代に伝えていきたいことは?
A:私たちが先生方から受け継いできたことを、後輩たちにも伝えたいです。それはたんにバレエの役を伝えるのではありません。愛情だったり、感情だったり、人間性というものを伝えたいですね。バレエダンサーという職業がどんなに大変なものでも、その中で人間としての資質、人間らしさを失わないということ。そうすれば、舞台も活き活きとし、ひとつひとつがまったく違う舞台になっていきます。先生たちから教えられてきたもの−愛と人間らしくあること−このことを私たちは今も忘れないようにしています。
Q:入団当初から伝説的なフリーギアの踊り手、マクシーモワさんの薫陶を受けてこられましたが、特にフリーギアの役でマクシーモワさんの教えで忘れられないものは?
A:このバレエは習得するのが本当に大変でした。マクシーモワ先生が現役時代にこの役をどんなふうに踊っていたかも知っていたし、また先生が実際にリハーサルでたくさん踊って見せて下さいました。見せてくださったんですけれども、それを再現するのは本当に大変でした。先生は天才的なバレリーナでしたから。。。
それから、私は振付の意味はそのままに、それをどう自分のものとして表現するか・・・ということが求められているのが判っていました。その振付に私が自分らしさを加えないといけないというところが難しかったのです。
単なるコピーではいけない。自分のものにすること、これが一番難しいのです。とくにこの役は32回のフェッテとか、そういう難しいテクニックが求められるわけではありません。お客さんも、テクニックを楽しむのではなく、この役のイメージであり感情を見ているのです。それを表現できるのは人間らしさじゃないでしょうか。マクシーモワ先生は、こういうバレエのほうが何倍も難しいとおっしゃっていました。32回のフェッテやつま先立ちをマスターするのは誰にでもできる、と。スパルタクスに限らずどんな作品でも、「回数が大事なのではない。大事なのは質」とおっしゃっていた先生の言葉をいまも鮮明に覚えています。
Q:今回は日本公演で「白鳥の湖」も踊って頂きますが、オデット/オディールの役作りはどのように考えていますか?
A:実は、今はオディールのほうがオデットより好きなんです。オディールは力強くて魔性の女性で、自分の性格とは重なる部分はありません。でも≪白鳥の湖≫は人間世界の話ではありませんよね。ですから私自身に重ねあわせて考えたりはしないんです。全く別物として理解しています。だからこそ、他のどの作品にも似ていない、面白い作品なのだと感じています。今ウラーノワ先生の最後の弟子であり、素晴らしい先輩のグラチョーワ先生とリハーサルをすすめていますが、いろんなニュアンスを発見しているところです。日本のお客様にも見ていただいたら、きっとみなさん私の≪白鳥≫をわかってくださると思います。
Q:入団した当時の芸術監督はワシーリエフさんでしたが、その後何人も芸術監督が変わりました。その中で、ダンサーとしての苦労はありましたか?
A:もちろん簡単ではありませんでしたけど、そのおかげで人生がより面白くなってきています。私は人とコミュニケーションをとるのが好きなんです。いろんな監督がいるというのも楽しみの一つです。監督によっては現代のコリオグラファー作品をやりたいという人もいれば、クラシック路線で行きたいという人もいるし、両方をやりたいという人もいる。ダンサーにとって大事なのは、お互いにきちんと理解し合えて、面白い演出作品が作られていくことなんです。それこそが劇場の使命であり、エネルギー源ですから。
Q:ここ最近、有名なバレエ教師の方々が次々に亡くなられていますが、そのことでロシアバレエ界に何か変化はありますか?
A:もちろん変わったと思います。変わったし、より複雑になりました。それにモダンの振付が増えましたよね。でも大事なのは、ダンサー魂は、その人の人間性で決まるという事だと思うんです。愛情を持ってダンスに取り組んでいるか、何のために踊っているのか。それさえあれば、バレエは芸術で在り続けると思うんです。単なる公演の繰り返しではなくて。先生たちはみな、バレエを心から愛していました。彼らにとってバレエは神聖なものであり、バレエのために生きていたような人たちです。
Q:マクシーモワ先生が亡くなったあと、あなた自身変わったところはありますか?
A:自分の中では何も変わっていません。変えることができません。マクシーモワ先生のことが大好きでとても大切な方でしたから。心の中にはいつも先生に教わったことがありますし、一緒に作ってきた作品のことを忘れることはありません。劇場の外で一緒に過ごした思い出もあります。ですから、変えたりせずに、反対にこれらのことをずっと大事にしようと思っています。何があっても、どんな悪いことが起こっても、マクシーモワ先生ならどうするか、と考えるようにしています。先生なら、こういうことはしないはずだ、とか。私自身、変わっていないし、これからも変わらないつもりです。しつけと同じでしょうか。先生や両親からのしつけられたことを捨てて否定してしまうことなんてできません。心からの誠実な、愛情たっぷりの教えでしたから、今でも私の中に生きています。

デビュー当時の可愛らしい(顔が本当に小さいのです!)雰囲気はそのままのルンキナ。しかしマクシーモワ先生から受け継いだものについて話す姿は凛として、ボリショイの伝統を引き継いでいくことの深遠さ、大切さをひしひしと感じました。
ボリショイ・バレエ 日本公演2012
会場:東京文化会館(全公演)
《スパルタクス》
2012年1月31日(火) 18:30
2012年2月1日(水) 18:30
2012年2月2日(木) 18:30
《ライモンダ》
2012年2月7日(火) 18:30
2012年2月8日(水) 18:30
《白鳥の湖》
2012年2月4日(土) 14:00
2012年2月9日(木) 13:00
2012年2月9日(木) 18:30
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<東京以外の公演>
★:白鳥の湖 ◆:スパルタクス ◎:ライモンダ
★ 2012年1月27日(金)三重県文化会館大ホール
◎ 2012年1月28日(土) 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール大ホール
★ 2012年1月29日(日) アクトシティ浜松大ホール
◆ 2012年2月5日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
◎ 2012年2月11日(土) 兵庫県立芸術文化センター大ホール
★ 2012年2月12日(日) 兵庫県立芸術文化センター大ホール


