ボリショイ・バレエがグリゴローヴィチ改訂振付による「眠れる森の美女」で開幕しました。
劇場前にそびえ立つ柱頭、それをイメージしたかのうような壮大な舞台装置。100年の眠りから覚めたオーロラ姫をスヴェトラーナ・ザハーロワが第一幕は可憐に、そして第二幕は壮麗に踊りました。相手役は、ABTでもプリンシパルを務めるデイヴィッド・ホールバーグ。
「スヴェトラーナに合うように、少し体を絞ったんだ。それよりもボリショイで踊るというプレッシャーもあるかもしれない・・・」と話していた彼。初めてボリショイ・バレエで主役を踊るアメリカ人!ということで、現地でもテレビ、新聞で大きく報道され、タクシーの運転手までもが「今度のこけら落としは、アメリカ人のダンサーが踊るんだって?」と言うくらい!なので、その重圧は凄まじいものがあったはず。
それを乗り越えた今日の舞台は、希望の王子(デジレ王子)にふさわしい輝く王子。すっと伸びたつま先と、しなる体、何よりも優雅な身のこなしは、観ている人の心を一気に夢の世界へと連れていってくれました。
今日の「リラの精」は、マリーヤ・アラシュ。静謐で凛々しく、高貴な踊りが、舞台の格をさらに引き上げます。「カラボス」を演じたアレクセイ・ロパレーヴィチは、邪悪な存在ながらユーモラスな雰囲気が、彼の踊りから漂ってくるのも、さすが。この二人が舞台で見せるやりとりは、言葉や歌がないバレエなのに、体が私たちに伝えてくれるものがあり、バレエという芸術の素晴らしさを深く感じさせてくれます。そして、妖精たちはアナスタシア・シュタケーヴィチ、ダリア・コフコロヴァなど、生き生きと踊りながらも「眠れる森の美女」にふさわしい気品が指先からつま先まで満ち溢れていました。
第2幕、大団円で登場する「青い鳥」にオフチャレンコ、「赤ずきんちゃん」にシュタケーヴィチ、「シンデレラ」をコフコロヴァとアブドゥーリン。前回2008年のボリショイ・バレエ日本公演で、目ざとい(!)バレエ・ファンがしっかり目をつけていた若手ダンサーたちが、大舞台で次のボリショイを担っていくにふさわしい踊りを披露し、喝采を浴びていました。(アブドゥーリンはちょうどこの日に、日本のファンの方から届いたプレゼントを大切そうに見せてくれました!)
と、隅から隅まで・・・ボリショイ・バレエが、その名にふさわしい舞台を魅せてくれたのですが、やはり、今回の真の主役は、85歳にしてこの作品を改訂演出したユーリー・グリゴローヴィチ氏。
ザハーロワとホールバーグ、主役の二人に迎えられカーテンコールに登場したグリゴローヴィチは、客席に挨拶した後、すぐにダンサーたちに向かって大きく拍手を送り、カラボス役のロパレーヴィチや、王様役のシートニコフなどと固い握手を交わしている様子が印象的でした。
「ボリショイ・バレエはロシアの誇りである。そして、ボリショイ・バレエの宝はグリゴローヴィチである」
この言葉を実感したボリショイ・バレエこけら落とし公演でした。
公演の後は、ベートーヴェン・ホールでパーティーが行われました。ボリショイ劇場が、長い改修に入る前から指導してきた先生方、事務局、そしてダンサーたちが喜びに満ちた顔つきで集まり、劇場の復活を祝いました。
若いダンサーたちに囲まれるグリゴローヴィチ。
「ダンサーには、良いダンサーか悪いダンサーしかいない。あなたたちは当然良いダンサーにならなければなりません。そのためにはクラシックをもっともっと学んでください。ボリショイの伝統と未来の源はクラシックなのですから」と話し、ダンサーたちはその言葉の重みをかみしめていました。


